2014/2/3

『ハンナ・アーレント』 Margarethe von Trotta

映画久しく観てなかったのですが、『ハンナ・アーレント』という映画を薦められて、観て来ました。ナチスの高官の裁判に立ち会う、ハイデガーの愛弟子の哲学者が、記事を執筆し主張を貫く、というのがざっくりとしたストーリー。あまりストーリーにドラマティックな展開はなく、淡々と進んでいくんだけど、引きこまれて、なんかあっという間に終わってしまったという感じでした。

取材を世に出す、ということ

記事を執筆するっていう意味では報道と言えるんだけど、この人は本業は哲学者なので、むしろPRの文脈に近いような気がしました。というか、取材が本業じゃない人が、取材を記事にして世に出すってことは実は自分も少なからずやっていることだったりして、そういう意味で感情移入できる部分があったというか。勿論、こちらはテーマ、状況、時代、全て違いますけど、でも勘所みたいなことは案外一緒かもなあと思いました。

凡庸な悪、ということ

凡庸な悪ってのが興味深かった。システムの中で事務処理的に行われる悪というのは凡庸で、従順に任務を遂行することを弁護するわけではないものの、しかしそこに過度の残虐性や常軌を逸した狡猾さはなく、むしろ、周囲は誰かが責任を担っていることにすることに救いを求めていたり期待を抱いていたりする、みたいなことを映画を通じて綺麗に構造化して見せてるなあという気がしました。ハンナ・アーレントの言葉で「人間のなしうる事柄、世界がそうありうる事態に対する言語を絶した恐れ」っていうのがあるそうで、政治現象としての全体主義を分析していたそうです。彼女の行動をストーリー化することで、彼女の思想を浮き彫りにする、というような使命が少なからずこの映画には設定されていたんじゃないかな。

おまけ

ハイデガーがなんかすごいしょぼい人みたいな感じでした。

まとめ

良い映画でした。いわゆる英雄的な憧れは抱かなかったし、素晴らしい女性というような話でもなくて、もう少し、思想と行動の帳尻みたいなこととか、思想が行動を生んで、行動を思想が律して、新しい行動が生まれていく、みたいな気骨ある回転、みたいなことが「すげえなあ」って感じだったのだと思います。あと、今、僕らの身の回りにあるもろもろを、結構投影できる映画だなあとも。全体観として淡々としていて、でもハードボイルドというわけでもなくて、大人な映画観たなあという感じでした。煙草吸ってるの見たくない人にだけはお薦めできませんが。ほぼずっと誰かが煙草吸ってる映画です。観て良かった。

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