2007/2/11

楽天経済圏とAmazon文化圏

楽天市場は1月APIを公開しました。Amazonは2月ポイントサービスを開始しました。インターネットショッピング市場の両雄という感じの2つの企業ですが、この2つには抜本的な違いがあります。楽天市場はショッピングモール。Amazonはショッピングサイト。

楽天市場が顧客企業に「販売のためのシステム」を提供しているのに対し、Amazonは顧客企業に「販売のためのロジスティックス」を提供しています。楽天市場の場合はその商品の販売において顧客企業が主幹を持つのに対して、AmazonではAmazon自身が主幹を持ちます。

しかしどうやらどちらの企業も、それぞれの足りない領域にフロンティアを見出しているようです。楽天はAPIを公開することでG-ToolsAmazletのように、CGMサイトからのトラフィックを誘導できるサービスが第三者の手で開発されていく方向を模索しており、これはAmazonが先鞭をつけたこと。一方で、Amazonはポイント制度を導入したばかりか、近い将来ショッピングモールのビジネスに進出するようです。ショッピングモールでは日本では楽天に一日の長があります。

楽天は楽天のサービスを通して、顧客企業とユーザの間で様々な商行為が行われていくことを総じて「楽天経済圏」と称しているようです。一方でAmazonはそれに該当する言葉を持っていないようですが、敢えてこれを「Amazon文化圏」と呼びたい。

楽天が経済圏であるのに対して、Amazonが文化圏であるということの意味は、Amazonの購買活動を支えているのがユーザによる情報で、質の優劣はあるにしても、様々な人によって寄せられる情報によって、Amazonでは商品力が本質的に(もしくは不特定多数の集合知としての商品への評価が)高いものこそが価値があるという仕組みを、サービスの中に盛り込んであるというところです。

Amazonというブランドの持つ信頼性に加え、ブログやSNSからのユーザによるレコメンデーションや、Amazonユーザによるレビューや評価、更にはそれが役に立ったかどうかという多数決までが行われ、いかに商品が魅力的か否かということを、集合知によって判断する仕組みが形成されています。

一方、楽天ではなかなかそうはいかない。楽天は言わばテナントビジネスですから、顧客企業に不利な情報を大っぴらに商品情報ページに併記するようなことはできないでしょう。収益構造からして(この場合はショッピングモールとしての楽天市場という企業の収益構造という意味です)楽天の顧客はあくまでテナントに入ってくれる企業であり、一般ユーザではないんですね。ですからサービスを眺めていると、何となく楽天の損得勘定が見え隠れする部分はあるのです。

そう考えると、Amazonのショッピングモールへの進出は、必ずしもAmazonのブランド価値を高める結果になるのかどうかはわかりません。進出なのか転換なのかでも、また議論の様相は違ってくると思いますし。ただ、Amazonが敢えてショッピングモールに乗り出すのであれば、顧客企業のことだけでなく、ユーザにとっても価値があり、既存のAmazonのサービスと調和の取れた仕組みを是非提案してもらいたいなあと思います。

Web 2.0ということの一つの価値は、企業がサービスのリソースを一般ユーザに求めるというところにあると思います。一般ユーザが企業のサービスの醸成に関与し得るがゆえに、運営側ですらコントロールできない、様々なアクションが生まれ出てきます。

以前、「CGMとインセンティブ」の記事で、Web 2.0的企業というのは「We Are Consumer Generated Company」と言えるような企業ではないか、ということを書きましたが、Amazonという企業はそうした側面を持っていて、かつ自社でもレコメンデーションサービスなどシステムを上手に使ってユーザの購買を助け促進する仕組みを持っていると思います。ショッピングモール進出は楽しみなニュースですが、これまで築き上げた「文化圏」をないがしろにするようなことがないようにして欲しいと感じています。

加藤 康祐 / 企画・設計

プランナー、デザイナー。加藤康祐企画設計代表。Webデザインを入り口に、2005年よりフリーランスとしてのキャリアスタート。主な仕事としてベンチャー企業でのサービスのUXデザイン、独法との防災メディアの運営、社会的養護の子どもたちの自立を支援するNPOのサポート。ラグビーと料理、最近イラスト。

加藤康祐企画設計

是非、フォローしてください!
Twitter / Instagram

(2012-10-5)
売り上げランキング: 14,705
100円