2013/10/27

『小商いのすすめ 「経済成長」から「縮小均衡」の時代へ』 平川克美

例によって、書評ではなく感想文ですが。小商いのすすめ、という本を読みました。弊社、というか、Experience Transporters時代から、「Small Business, Good Sense, Great Attitude」と言ってるくらいで、あんまり拡大志向がないというか、割と開き直っている部分あってw、お、珍しくSmall Businessの本では、読もう、と手に取ったのですが割と違いました。

小商いのすすめ 「経済成長」から「縮小均衡」の時代へ
平川 克美
ミシマ社
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本書でも冒頭の方で断ってあって、小商いって、ここで言ってるのは「ヒューマン・スケール」ということだそうです。日本語で言うところの「身の丈」にあたるけど、ちょっと卑下した印象だから、「小商い」って言葉を宛てがったそうなんですが、「身の丈」は「身の丈」で言葉として僕好きですけどね。

ざっくりとした印象としては、経済をやっている、やって来た人が書いた、「私小説」のような本です。「エッセイ」というには、もう少しどっしりしている。しばらく読んで、これはとことん懐古趣味な、古き良き時代に学べ的な本かなとも思ったんですが、それはミシマ社から書籍として出てくるだけあって、懐古趣味って言えば懐古趣味なんだけど、意を異にする。良い本でした。

僕らの周囲にあるものは、すべからく同じ枕詞をつけることができる気がして、それは「経済成長を前提とした」就労雇用とか、「経済成長を前提とした」社会福祉とか、「経済成長を前提とした」産業構造とか、「経済成長を前提とした」税制とか、まあ色々言えますよね。一番、僕なんかが個人的に思わされるのは「経済成長を前提とした」年金制度で、年金もらえませんよね感が漂いまくっているのとか。

僕のものの考え方として昔からあるのは「経済」に「自分の商売」を振り回されたくないんですよね。本当にできる限りそういうことにしておきたくて、そもそも得体が知れないし、自分のあずかり知らぬところで動いてるし、この国の経済に寄与するつもりもあまりない。

たまたま、昨日スタートアップの難しさの話をホームパーティでしてたんですけど、そういうの多分、同じようなこと15年前にもあった気がするし、なんかそういう狂騒曲みたいなのはそういうところには少なからずあって、全然スタートアップのチャレンジを否定しようとか、そういう価値観に与することができないとかいうことじゃないんだけど、昔書いたけど、「仕事の純度」を保つのの難しさってそういう志向性の中にはあるよなあと思うんですよね、少なからず。ゲームのルールがアウトオブコントロールというか。

そういう話ある中で、この本が言っている「経済成長」から「縮小均衡」へ、ってのは割とリアリティがあるし、ETが今の姿形をしているのは、少なからずそういうものをバックボーンとして抱えているし、多分、弊社の躍進に僕があまり期待してないです。そこそこで良いと思っている。面白いことはどんどんやりたいし、できることは増やしたいし、色々な人と仕事したいと思うけど、その上で、僕の価値観は「そこそこ」をどういう風に積み上げていくかにある。

この人の言ってることわかるんですよね、すごく。

あと、放射能の問題について、「不治の病を一つ携える」ってのはわかりやすい理解だと思いました。アレルギーから、喘息から、肌荒れから、水虫から、勿論、世の中もっと色々あるし、それぞれそれを患っている人には苦しさあるだろうけど、人間、何も携えてない人の方が珍しくて、でも放射能は確実にそういうことなんだろうと思います。これは、あきらめとかじゃなくて、心の持ち様の話だけど。

ただ、この本のずるいところは、結婚式を挙げて、子供が生まれて、家のローン抱えて、子供の学費があって、もしかすると親の介護とか始まってって状況にある人は、なかなか率先してこういうこと言えないんじゃないかと思います。今の60歳を過ぎた人の時間軸的な優位性って言っても良い。勿論、この人は昔からそういうことを考えておられるんだろうけど、僕、たまたまそういう縛りがこの年齢にしては限りなく少ないけど、多くの僕の同世代に取ってはこの話にリアリティを持たせるのは、抱えているもろもろが問題となるということで。で、あんまりそういうことへの具体的な処方箋はこの本にはない。

でも、これから社会問題として露呈していくことって、「経済成長を前提とした」もろもろ、それに基づくパーソナルな事柄が機能不全を起こしていく、という形を取るんじゃないかと思うんですよね。だから、この本は総じて、かなり酷な本だと思う。

その上で、「この本を読んでどう思うか?」ということは、何か教示を受けたり、示唆を受けたりするより、よっぽどためになるというか、ある種のリトマス試験紙のような気がして、さっき友人にも薦めました。僕自身、この本を読んでの自分の思考というか反応が面白かった。トンデモ本って言う人もいるだろうし、頭に来る人もいるかも知れない本ですけど。語り口は穏やかだし、何かを押し付ける本でもないけど、この本は剣呑です。読むと良いと思います。

ひとり仕事: フリーランスという働き方
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100円

加藤 康祐 / 企画・設計

1980年1月12日生まれ。フリーランス歴15年。プランナー、デザイナー。加藤康祐企画設計代表。学生時代にデザイン会社でWebデザインを経験。2005年よりフリーランスとしてキャリアスタート。これまでに個人から上場企業まで、100以上のクライアントとのプロジェクトを経験。主な仕事としてベンチャー企業でのサービスのUXデザイン、独法との防災メディアの編集・運営、社会的養護の子どもたちの自立を支援するNPOのサポート等。趣味はラグビーと料理。Keep the head up, Bind tight & Stay low.

加藤康祐企画設計

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