
アート、デザイン、そしてクラフト – Etsyを愉しむ
割と美大の人とかだと当たり前のことだと思うのですが、WEBデザインの仕事とかしてても、「アートとデザイン」の議論はそこに結構あるんだけど、「クラフト」の話って、あんまりそこに介在してこなかった気がするんですよね。WEBだからか。僕が今更言わなくても1世紀以上前に話す人達は話してたわけで。
最近、そこそこ日本の民芸とか工芸とかに関する知識が少し頭に溜まって来たので、改めて、柳宗悦を再読し始めてます。平易。
ここ数年、「Made in Japan」とか「手仕事」とか「民芸」とか、雑誌とかでも改めてクローズアップされるようになって、良いことだなあと基本的には思ってます。だから、アーツ・アンド・クラフツを産業革命を起点とした「製造」のリバウンドによる手仕事復興だと考えると、おそらく最近の日本ブームみたいなのは「消費」のリバウンドによる手仕事復興とか考えられるのかなあ、などなど考えてます。消費って言うか、平たく言うと何とかバブルの連続の裏返しか。
ただ、うちのクライアントの備前焼の金重有邦さんとかは、クラフトというよりアートな部分も大きい気がするし、ヘンプのワークショップ手伝わせてもらってるmaricoさんもヘンプ・アクセサリー・デザイナーって言い方をしているし、なかなか「クラフト」ということのポジショニングって、難しいなあという気もします。
興味はあるので、今年は益子のやきもの市行ったり(クラフト展としてもこの国での有数のイベントではないか)、こっちは偶然だけど、福岡の蚤の市とか行って楽しみました。ああいうのは楽しいです。そして今日の本題、Etsyの愉しみ方について。
そもそもEtsyって?
いつも割とかっ飛ばしてしまうので、今日は比較的丁寧に説明していこうと思います。Etsyは2005年にオープンしたオンラインのマーケットプレイスで、そこに出品される商品は大きく、「Handmade」「Vintage」「Craft Supplies」の3つに分かれます。言ってしまえば、アーツ・アンド・クラフツをWEBプラットフォームにしました、と言ってしまえる、割と米国でも圧倒的なサービスです。eBayのような中古品が出まわるオークション・サービスと違って、いわゆる「クラフト」周りにフォーカスしているのがポイント。写真で言うと500pxとかもそうですけど、アメリカのいくつかのサービスって、とても「質が良いもの」が表に出てくるから、有象無象本来的にはあるんだけど、すごいと思いますよね。うまくアルゴリズムで捌いているんだろうか。
ここからは例えばの話です。僕が最近やっているEtsyの使い方をいくつか紹介。
1.「興味のあるもの+国」で検索
最近だとこれ、完全に焼きものの話始まりますよねー。例えば、「Pottery Israel」で検索する。そうすると、Lapid IsraelというメーカーがMid Centuryの時代に人気があったっぽいということがわかる。そういうの面白いなと思うわけです。文献漁っても、あんまり出てこない情報。あと、こないだは「Soviet Watch」でWostokという旧ソ連の手巻きの腕時計を買いました。これは、もともと、「Watch」で検索かけた後に「Vintage」で絞り込んで、お、旧ソ連の時計って面白い割に安く流通しているのだなということに気付き、「Soviet Watch」で検索かけると、主に東欧とかの流出した腕時計を扱う個人商店がいくつか出てくるので、その中から目ぼしいものをピックアップ。で最終的にブルガリアのお店に注文して、届いてからベルトを近所で交換してこうなりました。これで1万円しない。とても良いものに見える。ストーリーもある。買い物として面白い。
2.Etsy Blogの「Featured Shop」が面白い
それは例えば、FlickrのブログやVimeoのStaff’s Pickとかもそうなんですが、Etsyも面白いお店をピックアップしてくれていたりします。Esty Blogの「Featured Shop」のコーナーがそれ。
Featured Shop: Up in the Air Somewhere | The Etsy Blog
ある意味、ET Luv.Lab.に近いニュアンスもあると思うんだけど、今日も友人と話していて、結局、すごく「人」にフォーカスした部分に「手仕事」の強みがあるんですよね。つまり「作り手」。このコーナー読み物としても面白くて、夜な夜な拾い読みしています。こういうの日本でも好きな人多いと思うんだけど、多分、良いものだと「担保」してくれる材料が薄過ぎて、なかなか文化として根付きづらい。でもこうやって見せられるのは、少し何らかの「担保」になりませんか、とか。
3.Treasuryというキュレーション
これはAmazonの欲しい物リストがそうだったりするし、Pinterestとか日本だとSumallyとかキュレーションのWEBサービスが担っている役割でもあるんだけど、Etsy本体にもユーザがキュレーションするサービスがあり「Treasury」という名前になっています。Etsyはきちんとコミュニティの役割も果たしているのが興味深くて、それが購買活動と結びついてるから更に強いんですけど、Etsyで必ずしも収益上がらなくても、良いプロトタイピングのためのプラットフォームになり得るんですよね。出品して、フィードバックをもらって、改善していくというような。最初はそれこそ知り合いが、の世界だと思うんだけど、そこはFacebook的な世界観と一緒で、知り合いのコミュニティ、知り合いの知り合いのコミュニティと伝播していくことで裾野を広げていく。そうやって醸成されたエコシステムにユーザが入って買い物するってのは、かなり高度なことなんじゃないかなと考えています。
翻って日本
Etsyって日本だとiichiとかあるんだけど、良くも悪くも「ビジネスの成功事例」として入って来てて、あんまり「アーツ・アンド・クラフツのプラットフォーム」へのフォーカスじゃないと思うんですよね。やってる人は、Etsyみたいなこと好きでやってるんだろうと思いますけど。その上で、面白くないなと思うのが、この国って、やっぱりモノの善し悪しの判断、「メディア」とか「ショップ」とかに良くも悪くも頼ってるところ大きいと思うんですよ。ただ、やっぱり旅に出て土地のもの見つけてくるのとか楽しいし、極端なこと言うと、柳宗悦とか、魯山人とか、白洲正子になれるというか、ああいう人達ってようは「現場を知るキュレーター」だったわけなんだけど、インターネットは現場に必ずしも行かなくても情報摂取できるものでしょう?という時に、そういうのって、やはりダイレクトな作り手との関係性って、改めて面白いと思うんですよね。今日も結局、購買する側の啓蒙が必要になるよね、って話になってたんですけども。
まあ色々考えることはあり、やってみたいこともちらほらあるんだけれども、とりあえず、Etsyへの偏愛を語ってみました。
追記
久し振りにiichi見たら、大分面白くなってるかも。
食器・キッチン 作品一覧|ハンドメイド・手仕事・手作り品の購入・販売 “iichi”
Tags : Amazon, ET Luv.Lab., Etsy, marico, Pinterest, ヘンプ, 北大路魯山人, 金重有邦, 魯山人

加藤 康祐 / 企画・設計
プランナー、デザイナー。加藤康祐企画設計代表。Webデザインを入り口に、2005年よりフリーランスとしてのキャリアスタート。主な仕事としてベンチャー企業でのサービスのUXデザイン、独法との防災メディアの運営、社会的養護の子どもたちの自立を支援するNPOのサポート。ラグビーと料理、最近イラスト。
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フリーランスとして働き始めるってどういうことだったのか?フリーランスとして働くってどういうことなのか?フリーランスが目指すことってなんなのか?5年間の自分の経験から書きました。(2010年執筆)