2007/2/3

ITに夢は抱けるか?

「ITには夢を抱けない」という言葉をある人から聞きました。IT業界に身を置く人の言葉です。「IT」という言葉の周囲の気運の浮き沈みは実に激しいものがあります。「ネット」なら尚更です。日本でも「ビットバレー」→「ITバブル」→「ホリエモンショック」→「WEB 2.0ブーム」と、たかだか10年にも満たない間に代わる代わるトレンドがやってきて、何だか振り回されている感もあります。

梅田望夫氏の『ウェブ進化論』でインターネットはコストゼロ空間になるという話がありました。一般ユーザに対して無料で質の高いサービスが提供されるようになる。一方でユーザ数が増えるほどインフラもサーバもセキュリティもコストが膨らみ、ネットビジネスは大きな資本力に頼らないと実現できないビジネス領域になりつつある、という指摘が「ITには夢を抱けない」と知り合いがおっしゃった主旨だったと思います。

たしかにKeyholeを買収しGoogleが作り上げたGoogle Earthは無料の質の高いサービスで素晴らしいですが、一方で資本力のあるグローバルな巨大企業Googleだからこそ「無料での提供」ということをできたわけで(しかも広告という収益構造は、サービスの無料提供を補完し得る)、一般のベンチャーがサービスを成功し拡充していくには巨大資本に頼らざるを得ない、という皮肉とも取れることも事実です。

「既存のビジネスのシステム化」という作業は大体一段落してきたという話も聞きます。これまで企業が培ってきたビジネスのノウハウをシステム化し、業務効率を上げるという受託型のシステム開発は、ことに大企業においては一通り終わったという考え方があるようです。

ソフトウェアの世界では「SaaS」という言葉が今流行りなんだとか。「Software as a Service」の略で、いわゆるASP(Application Service Provider)やWEBサービスという言葉と一線を画すのはやはりSoftwareと言っていること。すなわちクライアントにインストールして使うソフトウェアレベルの質の高いサービスを、ネット経由で提供できる、ということなのではないかと今のところ僕は解釈しています。

IT業界の僕の知り得る範囲でのざっとした俯瞰でしたが、本題に戻ります。「ITに夢は抱けるか?」。答えは色々あると思うのですが、僕が思っているのは「クリエイティビティのあるエンジニアはどんどん夢を馳せ得る分野」ということと、「ITに限らずどこの業界でも夢はクリエイティビティの隣人である」ということです。

クリエイティビティなんて言葉を使うと小難しくなってしまうのかも知れませんが、ようは「他の人にできないことをできるかどうか」ということだと思います。ITなんて優秀なエンジニアならすぐ真似できる、コピーされる、二番煎じが出てくる、という考え方もあるのかも知れませんが、真似できない肝を抑えておく、ということがいわゆる勘所を知るというやつで、それこそがクリエイティビティということだと思うのですよね。

大概の発明家というのは人生に一つの発明ではなくて、繰り返し繰り返し新しい発明を生み出していくものです。勿論スランプはありましょうが、色々な発明が生みだせるというのは、勘所を知っているということと、その上で一つ一つ発明を積み重ねていく地道な努力を日夜続けている証拠だと思います。そういうのは一握りの天才にだけ許される特権と捉えられがちですが、その人それぞれの専門分野に絞って考えてしまえば、結構身の回りにも天才に比肩するであろう人っていませんか?

僕の仕事はどちらかというと、自分の夢を実現するというより、クライアントの夢の実現を助けるという立ち位置で、それがうまいこと今の仕事においては、自分の夢と重なっているということだと思います。「ITに夢は抱けるか?」という問いの前に実は「夢は抱けるか?」ということが重要で、「IT」という業種に限らず、フロンティアスピリッツなくして夢は描けないし、本人にその気があれば、どんな業界でも夢は描いて間違いはないという気がします。

ただそこには、勘所を知ろうと弛まない努力をする、という一介の仕事人として鍛錬する精神が必要なのであろうと思います。何だかストイックな話になってしまいましたが、ロマンチックというのは「幻を描く」ということで、「夢を描く」ということは実は非常にストイックなことなのではないかと感じています。

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加藤 康祐 / 企画・設計

1980年1月12日生まれ。フリーランス歴15年。プランナー、デザイナー。加藤康祐企画設計代表。学生時代にデザイン会社でWebデザインを経験。2005年よりフリーランスとしてキャリアスタート。これまでに個人から上場企業まで、100以上のクライアントとのプロジェクトを経験。主な仕事としてベンチャー企業でのサービスのUXデザイン、独法との防災メディアの編集・運営、社会的養護の子どもたちの自立を支援するNPOのサポート等。趣味はラグビーと料理。Keep the head up, Bind tight & Stay low.

加藤康祐企画設計

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