2012/10/12

Experience Transportersとは何だったのか?

そう言えば、今年の年賀状に書いたテーマは「正しいは楽しい 楽しいは正しい」でした。そういうストレートな話を、割と大上段に構えてやってきたつもりですが、やり切れたかどうだったか。

Experience Transportersはそろそろ幕引きです。プランナー、加藤康祐の個人事業として2005年6月にスタートしたET。本当はフリーランス、10年やろうと思ってましたけど、仕事の推移やタイミング的なこともあり、準備潜伏期間を見なすと、まあ10年か、ということにもなりましょうから、ちょうど良い頃合かと思います。

何かをしたい、とか、何かを成し遂げたい、とか、何かを達成したい、とか、そういう大きな目的なしに、ただただ成り行きで始まったのがETでした。学生時代の仕事経験は本当に本当に役に立ちましたが、それでも自分のクライアントを持つのも、自分で仕事を取ってくるのも、自分で帳簿をつけるのも、自分で税金を納めるのも、初めての経験でしたし、本当に手探りで。ずっと実家の自室で仕事していて。18歳の時から自室で仕事はしていましたけど、一人で仕事をしていく上ではやはりたくさんの試行錯誤が必要で。よくよく考えると、そんだけ実家にパラサイトってのもなかなか珍しい経験だったかも知れません。

クライアントには本当に助けられました。誰が僕の仕事を育てたかと言ったら、間違いなくクライアントだし、クライアント越しに色々な世界が見えたなあと思うし、そうやって知見や見識を蓄えていくことはETの膂力になったと思いますし、色々な話を思い起こします。お金を払う側ともらう側、という関係性以上に色々な話をしたし、大いに脱線したし、それが新しい仕事になったこともあったし。煮え切らない営業トークに辛抱強く付き合っていただいて、本当にありがとうございます。多分、僕の知的好奇心みたいなものとか、知的探究心みたいなものの多くは、クライアントワークによって満たされていたと思います。

仲間にも本当に助けられました。まず以て25歳でフリーランススタートという時に、残念ながらそれまでの仲間を見渡しても同じような仕事をしている人は皆無。皆僕よりも早く色々な会社でスタートを切っていて、それも励みになったけれども。そのうち1人見つかり、2人見つかり、先輩が会社を飛び出ることもあったし、後輩から独立の相談をもらうこともありました。気がつけば、仲間だらけだ。

ETは初期の決めごととして、僕一人で完結する仕事だけをやっていて、それはなんか人に迷惑かけたくないしな、という割と後ろ向きな考えがベースだったんですけど、それは僕の個人技の向上に大いに寄与してくれたし、すっかり器用貧乏になってしまいましたが、今、仲間とチームで仕事をしたり、アウトソースする時にも、そういう経験は多分生きていて。酒を飲むだけでも楽しいけど、仕事をしたり、ビジネスじゃなくても一緒に動いたりすることはもっと楽しいし、その上で酌み交わす酒は更に美味しい。

あと多分。ラグビーも外せないです。ラグビーの知り合いからの仕事、って言うのは勿論なんだけど、そもそもオンとオフ、平日と週末の明確な境界線がはっきりしないETにあって、週末ラグビーができるってのは、多分相当ありがたいことだったんじゃなかろうか。社会人になってしばらくは与えてもらった環境で思う存分楽しませてもらって、後半は事務方や運営的なことや渉外的なこと、ようはプレイするだけじゃなくラグビーを続けるために誰かがしないといけないこと、の役回りが回って来たけれど、そこで学んだことは大いになると思いますし、それをETにも還元できたと思うし、スポーツをする人間としてのラグビーへの感謝もあるけど、仕事をする人間としてのラグビーへの感謝もままあります。

例えばちょっと懐かしい音楽を聴くと、その時どんな仕事をしていたかって強烈に思い出します。例えば古い作文を読むと、その時どんな言葉を近い人達と交わしていたかを思い出します。何かこうマイルストンを達成したって瞬間を覚えているというより、日々淡々と積み重ねてきたものの温度や湿度を何となく覚えていて、手がかりがあると思い出します。

数字で見るET。大して稼いでなくて、イメージ的にはおしなべると多分日本人の平均年収くらいじゃないかな。だから極めて普通のことやってたな、って感じもしていて。月収0万円、年収0万円から始まってますし、クライアントを前の仕事から引き継ぐこともなかったし、前職や親族のネットワークを使って仕事を作ることもありませんでしたから、よちよち歩きも良いところでしたし、ずっと右肩上がりかというと全然そういうわけでもなくて、人並みにサブプライムの頃とか売上落ちたし、でもそういうことも含めて続けて来れたのは本当に周囲に感謝するしかないなと思います。

モチベーションには幸いなことに事欠かなかったです。その点、大変都合良くできている人間で、自分の仕事をしている状態自体がモチベーションでしたし、その状態を続けることだけでモチベーションになってましたから。何かすごい明確なモチベーションエンジンって必要なかったですし、ずーっと飽きずに仕事をして来れたのは本当に恵まれてました。都度都度新しいチャレンジのチャンスをもらえてたということを含めて。

ETは考えて見ればずっと東戸塚でした。東京の仕事8割、神奈川の仕事2割、地方の仕事若干って言う感じでしょうか。仲間も東京在住がやはり多いです。そんな中でも東戸塚でやって来たのは色々意味がある気がしていて、ある意味、ちょっとメインストリームの仕事を客観視しながら仕事をできたというのもあるし、すごい大きな渦に巻き込まれずに済んだというのもあるし、たまに終電逃すと悲惨なことになってましたが、移動距離は決して長ければ長いほど損というわけでもなく、良い按配で仕事できてたかなと思います。東戸塚好きですしね。

数は少ないですが、独自のこともやってましたね。ET Luv.Lab.とET withwithとかがそうだし、震災の時に作った駅情報検索とかもそうかも知れないし、昔はブログもEUREKA、kosukekato.com、BrandYou.jpと3つくらいやってて、今では一つにまとまってますけど、そういや自費製本してコラムを配ってみたりもしましたし、電子書籍作ってみたり、Mobile Roadie使ってETアプリ作ってみたりもしましたね。その辺りは、クライアントワークにおいても良い実験場だったりして、僕は結構自分の庭で新しいこと試してから、クライアントワークに実装することが多くて、そういうスキームはうまく機能していたかなとも思います。

ソーシャルメディア。Facebook更新し過ぎだろ説が濃厚ですが。最初にMixi、後にTwitter、今Facebookがメインフィールドで、何だかんだの個人事業主、そういうツールにも大分助けられた気がしますし、SkypeとかFlickrとかDropboxとかなかったら、今の仕事って成立してなかったかもなとすら思います。モジュラージャック持って灰色の公衆電話を探し歩いてWEBを更新していた時代から、P-inやH”になり、PalmもWindows Mobileも使ったし、今じゃiPhoneがAll in oneに近い状態になっている。そういうネットに接続されたツール群は、決してそれが仕事の決定打になっていたとは思わないけど、ワークスタイルやライフスタイルを支えるとても重要なものだったなと思います。

作る仕事以外も面白かった。ブロガーとして秋田に行ったり、農家の視察に熊本に行ったり、母校のイベントのゲリラトークセッションに呼んでもらったり、レストランのオープニングイベントのUstreamになぜか出演したり、スイーツの試食会行ってみたり。僕は基本WEB屋でしたから、面白がって呼んでくれる人の存在は本当にありがたかったです。コンサルティング契約をしてくださったクライアントもそれほど多いわけじゃないけどおられました。僕の仕事は基本的には事業そのものではなく事業者にコミットする仕事だけど、WEBやデザインに限定されない領域でも、期待を持っていただけたのは、ビジネスマンとしての自信にもなりました。

多分、仕事を回すことによって仕事以上のことをする、ってのが仕事の目的かなあと、最後の方ではぼんやり考えるようになっていて、ETとして仕事以上のことは仕事を回せないとできない気もするし、仕事を回せたら仕事以上のものを作れるようにありたいなと思いました。それは例えば人間関係でも良いし、全く別の新しい仕事でも良いし、想定してなかった成果かも知れないし、打ち上げの爽快感かも知れないし、数年後また声をかけてもらえる記憶なのかも知れないし、わかんないですけど。

冒頭の設問に戻ると、「Experience Transportersとはなんだったのか」というのは、まあ色々書いては来ましたが、突き詰めると、「僕が10年生きた」というだけだなーと。明確な何かを達成したわけではないし、かと言って、何もしてないわけでもないし、なんなのかと言われれば、10年生きたってことなんだろうなと思います。だからこそ、ETが生み出した成果物や、繋がり繋げた人間関係や、そこにある信頼関係や、見識ノウハウは大事なものだと思いますし、少なくとも僕には大事、って結論になりますよね、そういうことだと。

もうすぐ(明日とかではないよ)次の10年が始まります。スタート切る時はまたそれはそれでなんか書きそうな気もしますが、とりあえず、これは今後も変わらないだろうなというところで、ET Brand 10を引用してシメの言葉に変えさせていただこうかと。

ET Brand 10

01:平静な社会の実現に貢献する
Experience Transportersの目指す社会、それは「平静な社会」です。様々な業務、様々な方々とのお付き合いを通じて、「平静な社会」の実現に貢献してまいります。

02:Small Business, Good Sense, Great Attitude
社会への大きなインパクト、にExperience Transportersは至上価値を求めません。山椒のようにピリリと辛いプロジェクトを通じて、クライアントとの「Good Partnership」を築き、目標達成への歩みを進めます。

03:新規事業を応援します
Experience Transportersではこれまでに多くの新規事業立ち上げに関わるデザイン企画業務を経験させていただきました。今後も引き続き、新規事業に可能な限りご助力させていただきます。

04:Design is a Communication
Experience Transportersでは、デザインの目的をコミュニケーションであると捉えています。デザイン制作以外であっても、コミュニケーションを目的とした業務であれば、様々な領域に挑戦しています。

05:クライアントが大事だと思うことを大事だと思える
制作者としての意図は重要ですが、それよりもまず、クライアントが大事だと思うこと、それを同じようにとはいかずとも近しく大事だと思えること、そうあろうとする姿勢がExperience Transportersが業務に携わる強みだと考えています。

06:Your External Brain
知性の探求に引き続き取り組みます。Experience Transportersはあなたの外部頭脳です。

07:上からうけた恩は下に返す
Experience Transportersは多くの方々に支えられここまで来ました。特に多くの先達の方よりいただいたご恩なしには今はありません。これからの人達にExperience Transportersが先達であれるよう、「上から受けた恩は下に返す」を実践してまいります。

08:Enlighten Nomad Style
「ノマド」や「フリーエージェント」と言った働き方が、日本でも徐々に普及の兆しを見せています。Experience Transportersが、一つのモデルケースと成り得るよう、発信と行動に努めてまいります。

09:ET Brandをこれからも育てます
弊方のような個人事業において、Experience Transporters自体もそのショーケースとなっていると考えています。会社ではないですから規模を拡大、ということはないですが、これからもET Brand自体を育てていくことに、労力と時間を惜しみません。

10:To Be Classic
目先の流行りものに振り回されず、長い年月を経ても愛され続ける、そう言った不朽で普遍なモノやコトをこれからも模索していきます。

さて、ラストスパートですね。

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加藤 康祐 / 企画・設計

1980年1月12日生まれ。フリーランス歴15年。プランナー、デザイナー。加藤康祐企画設計代表。学生時代にデザイン会社でWebデザインを経験。2005年よりフリーランスとしてキャリアスタート。これまでに個人から上場企業まで、100以上のクライアントとのプロジェクトを経験。主な仕事としてベンチャー企業でのサービスのUXデザイン、独法との防災メディアの編集・運営、社会的養護の子どもたちの自立を支援するNPOのサポート等。趣味はラグビーと料理。Keep the head up, Bind tight & Stay low.

加藤康祐企画設計

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